躊躇った末に伸ばされた手はそっと僕の裾を掴んだ。そのまま微動だにしない、その子のうつむいた顔が見れないのが嫌で思わずぐいと顎を掴んで此方を向かせる。
真っ赤になって潤んだ瞳とかち合い、その瞬間自分の頬がかっと熱くなるのがわかった。


「ひ、ひばり、さん」
「、なに、」


とっさに反応した声は明らかにかすれていて、


(なにこれ、)


こんなものは知らない。なんで心臓がどくどく耳の隣で聞こえるんだ。
混乱しながらも大きな琥珀の瞳から目を逸らせない。だめだ、絶対心臓の音が此の子に聞こえてしまうのに。


「あ、の、…オレ、」


こくり。
唾を飲み込んだときに動いた咽仏が目に入りくらりとした。


「…ッ、好きです」





(え、)



今此の子は何を言った?


「さわ、」
「ごめんなさいごめんなさい、好きなんです…ッ」


身体を巡る血がすべて顔に集結したんではないかと思うほど真っ赤になっているその様子はどう見ても嘘をついているようにはみえない。


(じゃあ、)

此の子は本気で僕を?


その瞬間、心臓が先ほどよりも早く音を立てる。


(うれしい、)


うれしいうれしいうれしい、だって僕も、そうだ。僕だってずっと、君のことが好きだった。
そう言おうとしたのに口を開いても声がでてこない。だってこんな、恥ずかしいなんて、だめだ、言わなきゃ此の子が誤解してしまうではないか、言わないと、


「さ、沢田」

なんだこの弱々しい声は!

「!は、はい」
「僕も、その、」


好きだ、そう続けようとしたそれは、後ろからの車に遮られる。

「? すみません、聞こえなかったです」


「雲雀さん?」


「僕も君が好きだっていったんだよ!!」


〜〜〜なんでここで優しく言えないんだ!内心でそう自分を罵倒しつつ、羞恥でそらした目を沢田に恐る恐る合わせた、ら、


「ちょ、なんでそこで泣くわけ!?」


ぼろぼろ泣き出した彼に、あわてて涙をぬぐう。


「う、うれし涙ですよう」


うれしい、夢みたい。
ひっくひっくとしゃくりながらうったえるその様子に堪らなくなって、


「…抱きしめても、いい?」


沢田は一瞬何をいわれたのか分からなかったのかきょとんとして、そしてそれから


「許可なんか、いりません!」




そう笑いながら僕にぎゅっと抱きついてきた。