雲雀の色に似た、その輝く漆黒の上で雪肌の白さはいっそまぶしいほど。


鏡のように反射するピアノの鍵盤の蓋は綱吉の体重を乗せてもびくともしなかった。
それに腰を下ろした瞬間思わず声を上げたほどの冷たさはもはやない。綱吉の熱が伝わったのだ。
腰を下ろしたまま、前かがみになって雲雀の肩に顔をうずめて動かない綱吉に雲雀はそっと声をかけた。

「綱吉」
「…ぁ、は、い」

心臓の速さと同じように荒い呼吸の中、掠れた声で返事をした綱吉は軽く咳をした。

「顔あげて」
「、」

雲雀の言葉にゆっくりと顔を上げる。
情事の後特有の艶をたっぷりと含んだ表情は雲雀の気を十分にそそらせたけれども、元々体力のない綱吉にそうそう無理をさせるわけにはいかない。というかもうすでに無理をさせた後、だったのでこれ以上すると今までの経験からいって、気を失うのは間違いない。
満腹になった獣の仕草で、雲雀は自分の頬を綱吉のそれに擦り付けた。
そしてグロスなど塗っていないのにぷるんと艶やかな、さくらんぼのように赤い唇にちゅ、と軽くキスをする。

「着替え、手伝ってあげる」
「え、」

綱吉は赤い頬をさらに上昇させた。雲雀の申し出は親切からきていることはわかる。わかるがそんなことはとても、

「い、いいです。自分でやります」
「でも綱吉、君動けないだろう」
「う、」

そうだけど、と綱吉は口をどもらせた。
ブラウスの前ボタンはすべて外されていて、リボンも同様だ。下着はといえばブラジャーは腕にはかかっているものの、ホックは外されているし、ショーツはそれどころか床に――正確にいえば、雲雀が落とした学ランの上にちょこんと置いてある。

「ほら」

ためらいなくその、淡いピンク色の――前に小さなリボンの飾りがついている――ショーツを手に取り、雲雀は綱吉を促した。乱れたスカートから小鹿のように華奢な太腿がのぞく。

「う、うう…」

恥ずかしくて泣きそうだ。
雲雀は片足を曲げて跪き、するりとショーツを綱吉の足へ通す。耐え切れないというように羞恥でぴくぴくと時折震える太腿は、ともすればコトの最中を彷彿させた。
慣れた手つきで穿かせて、雲雀は立ち上がる。

「ほら、万歳して」
「…」

うつむいて顔を隠していうとおりにする。ブラウスの中に差し込んだ雲雀の手はそのまま背中に回り、ホックをつけた。中のワイヤーが胸にあたらないよう注意をしつつ。
次いでブラウスのボタンを一つ一つはめて、リボンをつけた雲雀は最後の仕上げとばかりに下を向いたままこちらを見ない綱吉を抱き上げた。子どもを抱き上げるように、肘で尻を支える。

「ひゃ、ひ、ひばりさ」
「いい加減慣れればいいのに」
「ん、…む、無理です、」

くすくす笑いながら驚く綱吉の鎖骨あたりに口付ける。吸い付く感覚に綱吉はきゅっと目を瞑った。
雲雀はピアノの前にあった、しばらく放っておかれた椅子に腰掛けて綱吉を膝の上に横抱きで乗せる。
おずおずと首にまわされる腕に彼の目尻が和らいだ。