猛獣がオレの膝で寝ています。
なんでこんな状態になってるんだ?今日はいい天気だったから、屋上へ昼寝しに来たんだよな。
うとうとしていたらそのまま壁に寄りかかって寝ちゃったみたいでふっと目が醒めたら、この状況。
これってあれだよね、絶対少しでも動いたらこの人は起きて噛み殺されるよね!
ひぃ、なんで昼寝しちゃったんだオレのばか!いやばかですけどねどうせ!
(あ、)
(つむじ、だ)
どどどどうしようなんかすっごく触りたくなってきたんですけど!だめだ、耐えろオレ!
一時の誘惑(?)に身を任せたら確実に破滅だよ!てゆーか噛み殺されるよ!
ああ、でも。
なんかもういいや!
ぽす。
(すごい、さらさらだなあ)
癖毛の自分ではどうやっても真似できない感触だ。日にあたって少し熱を帯びた彼の毛をすいてみる。
(気持ちいいな)
(寝顔も、)
綺麗な人。なんだろう、こういうのを完璧、っていうんだろうな。性格はだいぶ(かなり?)理不尽だけど!
そんなことを考えながらも手は止まらず、ああこのまま雲雀さんが目を覚ましませんように、と祈ったとき。
(あ、)
(笑った)
ふわり、と。いままで見たことのない、穏やかな(この人に穏やかなんて形容詞を使う日がまさか来ようとは!)微笑み。
つかの間見惚れているとそれはすぐに消えてしまった。
(あれ、なんか)
心臓がばくばくしてきた!ななななんだろうこれ。きっとびっくりしたんだよね、うん!なんか顔が熱いような気がするけど気のせいだよ!
「…何してるの、きみ」
動いていた手が止まった時を狙ったように、雲雀さんは目を開いてオレを見た。
「ひひひひひひひひ、雲雀さん!!!!すいませんこれは出来心ってゆーか、いや魔が差したってゆーか、」
「・・・まあ、今回は君の膝を借りたから許してあげてもいいけど」
僕に黙って触れたこと、
そう言って身体を起こす雲雀さん。
え!?かみ殺されない!?やったー!!おれって運がいいな!!胸をなでおろす瞬間を見計らったように、
「今度から君、枕だから。呼んだらすぐに応接室にくるようにね」
え、
「ちょちょちょっと待ってください、意味がわからないんですけど!
「だからそのまんまの意味だけど」
それともなに、僕の言うことが聞けないって言うの?
チャキ、
「いやいやいや滅相もない雲雀さんがお呼びになったら全速力で向かわせていただきます!!!」
「分かればいいんだよ」
構えたトンファーをおろした雲雀さんはどこか満足げにそういって、そのまま興味を失ったように屋上からでていった。
「………………え?」
呆然とするオレは屋上に取り残され。
その日応接室で仕事をする風紀委員長は1日中ご機嫌だったとか。