クリスマスイブは、毎年母さんが腕を振るって御馳走を作る。オレと二人のときだって3日はもつほどの量を作っていた。
まして今年はリボーン、ビアンキ、ランボにイーピンといった新しいメンバーがいる。例年よりもすごいことになるだろうことはたやすく想像がついた。
さぞかし騒がしいパーティになるだろうなと苦笑しながら、この日雲雀さんと会うことは諦めていた。
群れを何よりも嫌うあの人のことだ、今日は1日中カップルで溢れる並盛をパトロールしているんだろう。第一雲雀さんこういう行事とか興味なさそうだし。
―――――そう思っていたから、子どもたちが寝静まった後(ちなみにリボーンはビアンキとデートだと言って出かけていった)、ガラリと窓を開けて雲雀さんが入ってきて本当に嬉しかったのだ。
ガラにもなく、ああオレって愛されてるなあと思ったのだ。……思ったのに!!!
「あの、雲雀さん」
「何」
「…なんですか、コレ」
ベッドに腰を下ろして向かい合った2人の間には、いかにもクリスマスらしい赤と緑でグラデーションされた紙袋と、先ほどまでそれに入っていた、
「見て分からない?サンタクロースの服だよ」
「オレが訊いてるのはそこじゃありません。…コレってどうみても女物ですよね」
「うん、そうみたいだね」
「みたいって、これスカートじゃないですか!!」
しかもミニ!
そう、部屋に入るなり雲雀さんがいそいそと取り出したのは、綺麗に畳まれたサンタのコスプレ(?)のような女の子の服だったのだ!
全体的に赤と白で、ところどころ白いボンボンのついたそれは確かに可愛い。例えば京子ちゃんが着たら、拝みたくなるほど可愛いらしいだろう。
だが、しかし。いやでも、まさか、
「着て」
やっぱりかああぁぁ!!!
ものっそい笑顔だよこの人!!!
「嫌ですよ!俺が着ても気持ち悪いだけですって!」
「大丈夫、サイズはぴったりだから」
会話になってねえぇぇ!!お願い誰かこの人に会話のキャッチボールの仕方教えて!!
「ダメです。これだけは譲れません。ぜっっったい着ません」
「…そう、」
死ぬ気になったような強い決意を込めたオレに、残念だな、と雲雀さんはため息をついた。
よかった、諦めてくれたみたいだ。安堵して胸をなでおろしたその瞬間。
「じゃあこれは僕から君へのクリスマスプレゼントにするよ。だからこれを着るのが、君から僕へのプレゼント。それならいいだろう?」
よくねええええぇぇえ!!!!!!!!!!!!!!!!
心の絶叫はこの人には届かない。
はい、服を渡しながら雲雀さんは目を細めてにやりと笑った。
「まあそれでも着れないっていうなら、着させてあげてもいいけど」
半泣きになりながら厭々それを着たオレがぺろりと頂かれしまったことは、まあ云うまでもなく。
遠い目をしてどうか来年は同じことになりませんようにと願ったそれが叶えられるかどうかは、それこそサンタクロースくらいしか知らないだろう。