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風呂から出ると、テーブルには冷やし中華が用意されていた。佳主馬が出てくる時間を見計らったのだろう(健二の計算は相変わらず正確だ)。高校生二人は退屈そうにテレビを見ていたが、佳主馬の姿にやっと飯にありつける、と嬉しそうに呟いた。
「佳主馬くん、さっき典子さんから電話がかかってきたよ。二人をよろしくって」
「…だから今更連絡きてもさ」
「こっち遊びに来ること決めたのが、今朝だったんだって。――そうなの?」
「うん」
「急に行きたくなったんだよな」
思い立ったがキチジツってやつ、と笑う。
全員そろっていただきます、と手を合わせて食べ始める。佳主馬含めて育ち盛り三人の胃に合わせての冷やし中華は、けっこうなボリュームだった。
同じ年の祐平と真悟は、父親たちが仲の良い兄弟であることも影響して昔からそれこそ兄弟のように仲が良い。いつも一緒にいて様々ないたずらをしでかしてくれたものだ。
その小さな怪獣たちは、最近になりようやく落ち着きをみせるようになった。父親たちに似たのだろう、ぐんぐん伸びて身体つきもしっかりしてきている。
お代わり用に用意した麺がものすごい勢いで消費されるのを見ながら、一人当たりの食費を瞬時に脳内毎月で導き出した健二は、思わず口の中でおお、と感嘆の声を上げた。成長期というのもあるだろうが、思えば陣内家の皆は元々よく食べる人たちだった。
「健二さん、食べないの?」
「食べてるよ」
「いつもよりゆっくりじゃない?」
「いや、皆の食べっぷりに感心しちゃって」
「上田でいつも見てるでしょ」
「うん。そうなんだけどね」
食べ終わって皆一斉にごちそうさまをした後、片付けようと席を立つと、健二さん、と佳主馬に呼び止められた。
「後片付けはこいつらにやらせるから、健二さんは座ってて」
「いいよ、すぐ終わるし」
「働かざるもの食うべからずだよ。それに祐平も真悟も客じゃない」
家族だという言葉に頷きながら、健二はいいのかな、とちらりと高校生二人を見やる。仕方ないといいたげに立ち上がり、祐平は皿洗いを、真悟は皿拭きを始めた。
「佳主馬兄だってなんもしてねーじゃん」
「俺は夕飯を作るんだよ」
元々使った食器は少ない。五分ほどで終わった手伝いに、健二はありがとうとお礼を言う。
「それで二人とも、東京観光っていってもどこに行きたいの?」

「「東京タワー」」

小学生の遠足のような答えに、佳主馬は微妙な顔をした。