会計を済ませ、預けたコートを受け取ると雲雀は自分を見上げる綱吉に笑いかける。

「じゃあ、またね」
「はい、いつも有難うございます。お気をつけて」

また、お待ちしております。
深々とお辞儀をする綱吉を見て、随分様になるようになったと思う。2年の月日は確実に彼女を成長させた。初めこそぎこちなかったが、従業員が入ってからだろうか。少しずつ、料理の出し方やお酒の注ぎ方が巧くなっていった。接客の慣れてきたからだろうかと思うとイラついたものだったが、どうやら綱吉が接客するのは自分にだけらしい。あの店の常連である部下や、つり目の従業員が言っていた。

そう、彼女は成長しているというのに、己のこの恋はあの日から時間が止まったままだ。いいや止まったままなどころか日に日に増すこの恋情に振り回されている。こんな自分はらしくない、そう自嘲しても彼女に逢いにこの店に足を向けずにはいられないのだ。笑顔が見たい。声が聞きたい。そうして気づくと2年がたつ。その間何度想いを告げようとしたか分からない。下手に行動を起こして嫌われるよりはこのままでいたいという思いもたしかにあるから、どうしようもない。店を出ると冷たい空気が顔を撫でた。温かい食事と酒のためか手先まで温まった身体には心地よく、足早に自宅へと向かう。

思考はいつだってループする。彼女は自分のことを何一つ知らないのだ。もしも知ったとすれば―――。


想いを、告げられないのは自分のことを知って綱吉に嫌われない自信がないから。嫌われないまでも、怯えられてしまったら。二度と笑顔を見せてくれなくなったら、なんて想像するだけでぞくりとする。



臆病者め、己を罵倒する声は冬空に消えていった。