でもまあ今までまったく関わりがなかったなら、これからもそうでしょう、そう骸は話を締めくくった。

「待ってよ骸。その人の特徴とか教えてよ」
「聞いてどうするんです?」
「会ったら即効逃げる」
「教えたところで無駄だと思いますよ。あの男は直接叩きのめす相手以外には姿を見せません。…ああ、でも彼の部下はすぐにわかりますよ。そろいもそろってリーゼントですから」
「…りーぜんと、」

どこか唖然として繰り返す綱吉に見えないだろうとわかっていながら頷き、骸はあの10年前から変わらない男とその周辺の部下の姿を脳裏に浮かべた。昔は学ランだったが、近年はさすがにスーツになった。どっちにしろむさくるしいことにかわりはないが。

「クフフ、集団でリーゼントっておもしろいですよね。毟りたくなる」

今にも、今度やってみるのもいいかもしれないなどと言い出す前に、あわてて綱吉は別れを告げる。

「わかった、ありがとう。じゃあまたな、」
「ああ綱吉君、君の店って何時閉店でしたっけ?」
「10時だけど?」
「お店終わった時間狙って今度行きますねー」
「え!」

電話越しの驚いた声に骸はきょとんとする。それほどヘンなことは言っていないつもりだが。そんな彼に綱吉は、

「いいいいい、いいよ!お店が休みのときにオレがそっちに行くから!!それにほら、夜遅く来させるのも悪いし!!」
「気にしなくていいですよ、僕も店が休みのときに、」
「とにかくほんといいから!また今度行くとき連絡する!」

じゃあ!と慌てながら電話を切られ、ツー、ツーと鳴る電話を片手に骸はしばし考え込む。


「…そんなに嫌がられるとますます行きたくなるじゃないですか」

ぽつりと呟いたその顔は、綱吉が見たら問答無用に逃げ出したくなるほど何かをたくらんでいそうな、うさんくさくも輝かしい笑顔だった。