ノックの音に許可をだすと同時に腹心の部下が部屋に入ってきたのは、仕事が一区切りついたときだった。
見計らったようなタイミングで、彼は用件を告げる。

「恭さんに客です」
「誰」

そうして告げられた訪問者の名に恭弥は動揺する。そう、部下が見ていてそうと知れる程度には。恭弥は目を伏せ、一瞬自嘲ぎみに口の端をつりあげた。次の瞬間にはそれは消えうせ、いつもの冷然とした彼に戻る。並盛の支配者たる、彼に。

「会うよ」
「御意」

応接間に通していた客に会うべく、恭弥は一歩踏み出した。











その一歩が、終わりへの一歩だということは分かっていた。