足の早い従兄弟のことだ、もう家についているかもしれないと綱吉は近道をすることに決めた。帰りは夜道では危険だからと通らない道だが、まだ日が暮れていない今なら大丈夫だろう。そう思い、角を曲がったとき、いきなり後ろから腕を引っ張られ、綱吉は驚いて声を上げた。

「きゃ、」
「…やっぱり。この女だ」

だらしなく髪を伸ばした人相の悪い青年が、まるで逃さないというように彼女の腕をきつく掴んでいた。どこかで会ったことがあっただろうか。綱吉は怪訝そうな顔をする。すると青年の後ろから二人、同じような恰好をした荒んだ目つきの男たちが顔を覗かせた。

「マジで?」
「ああ、間違いない」
「てことは、こいつがヒバリの女かよ」

ヒバリ、とその名が男の口からでた瞬間、綱吉の目が見開く。だが彼女が何か言う前に、正面から綱吉の顔を覗き込んだ男は強引に綱吉の顎をつかみ、無理やり上へ向かせた。

「へえ…けっこう可愛いじゃん?あいつも人間だったんだな」
「あの…、」
「お、口利いたぜ」

ニヤニヤと品無く笑う男を見る。どうも良い感じがしない。早く彼らから離れたほうがいいと思うが、腕をつかまれていて振りほどけない。

「どこかで会ったこと、ありますか?」
「ないぜ。ただ見かけたことならある。だからあんたを見つけられてほっとした。これであいつをぶちのめすことができる」
「あいつ、って…」
「ヒバリ以外にいるわけねーだろ。さあて、ちょっと付き合ってもらおうか」

ぐいと引っ張られ、歩かされる。嫌だ。早く逃げないと。男の力は暴力に慣れているものだった。それを感じ取り綱吉の背筋が震える。だがそれ以上に、

「ヒ、『ヒバリ』さん、に会ってどうするつもりですか、」
「あ?決まってるだろ。あいつが俺たちにしたように、命乞いするまで痛みつけるんだよ!」

ぎろりと睨まれ、びくりとした。けれど恐怖よりも目の前の男たちの、聞き捨てなら無い言葉のほうに反応する。

「は、放してください、」

足に力を入れて逆らう綱吉に、男たちは不機嫌そうに眉をよせた。元々短気な彼らは、自分たちの思い通りにならないことが我慢できない。

「おい、抵抗しても無駄なんだから大人しくついてこい」
「そうそう、俺らが優しくしてるうちに。…じゃねーと殴るぞ?」
「ッ、いた、」

ぎりりと先ほど以上に強く腕を掴まれ、綱吉は痛みに顔をしかめる。それでもいやいやと頭を振る。綱吉の腕を掴んだ男がちっと舌打ちをして、腕を振り上げた、その瞬間。
凍りつくような殺気を感じ、後ろを振り向き、



彼らの視線の先には鬼のような形相の、トンファーを手にした男が立っていた。